いやー、DeNAが運営するキュレーションサイトが大炎上しておりますね。
DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回) | More Access! More Fun!
この騒動も結局はサイト閉鎖という落とし所になったわけですが、そもそもキュレーションサイトやパクリ記事のサイトは、実はそこらへんにゴロゴロあるわけです。
なぜここまで炎上したのでしょう?
今回の問題は、
- 医療的なことを含めた”人の健康に関わること”がテーマのサイトであったこと
- サイトで掲載した記事が明らかにデマ(肩こりの原因は幽霊とかw)
の2つです。
人のふんどしで相撲をとるバイラルメディアという存在があまり騒がれなくなって久しいですが、インターネットの歴史をみても、パクリコンテンツというものはずっと存在しているんです。
例えば、Naverまとめなんか最たる例ですね。他のサイトがアップした文字や画像を、URLそのまま引っ張ってきて掲載する。「パクリじゃないか!」と言われたら「うちのサーバーにはデータないので!文字も引用です!」と逃げる。
法的には確かに問題はないが、それってネット倫理的にどうなの?というグレーゾーンが跋扈しておりました。しかし、それはそれ、今回のWelqほど炎上した例は過去ないんじゃないでしょうか。なんせ行政が動く問題にまでなっていますからね。
Welqも利用規約ではしっかり「うちのサイトの情報の信頼性は、あくまでユーザーが判断してね!」と言っているわけですが、そんなもん知らんわけですよ。少なくとも、利用規約を気にしてネットサービスを利用する人は全人口の1割もいないでしょうし(サービス開発経験のある人や経営者くらい?)
やはり、医療という超専門性の高いネタを顔も名前もしらないクラウドソーシングサービスから雇ったライターに書かせるというのは、法律的には問題なくても、倫理的には大炎上する結果になったわけです。
そもそもインターネットにある情報の量は少なく、質も低い
こういう記事を見つけて、ふむふむなるほどどと思いました。
確かに、今回のWelqの騒動は、Googleのアルゴリズムの敗北であるという見方も一つあるでしょう。オーソリティーランクとか情報の信頼性を検索順位に反映する、と謳っているGoogleですが、少なくとも現段階ではパクリとそうでない記事の判別はできていない、ということになります。
しかし、私は実はこれが本質的な問題ではない、と思っております。
実は、そもそもインターネットには、良質な情報というものは極めて少ないものであり、情報の総数もかなり少ない、この事実を知っているか知らないかがポイントだと思います。
例えば、私は大学で海外の論文や学術記事を、山のように読んできました。それこそ広辞苑くらいの厚さのテキストを英語で読むなんてこともザラでした。そんなアカデミックな学びの場にいて思ったことは、世の中にはこういった論文や学術記事が存在することをそもそも世の多くの人は知らないし、ましてインターネット上にはほとんど良質な記事は存在しません。
なぜなら、良質な記事、科学的で信頼に足るデータがある情報、というものは、なかなか一般には出回らないものだからです。そして、良質な記事をインターネットで発信するためには、今の世の中にはネット上で情報発信できるライターの絶対量が足りていません。
たまに大学や研究機関がデータを公開することはあります。例えば、ISP細胞などの革命的な新技術は、テレビなどでもピックアップされることもあります。しかし、それは世の中の”良質な情報”の中のほんとうにごく一部だけが注目されているに過ぎません。
それにも関わらず、インターネット上にある記事は、裏付けも根拠もデータもない記事ばかりです。こういった記事もそれ自体に問題はありませんが、良質な情報であるか?という問いに対しては疑問が残ります。
ここで断っておくと、私はそういったインターネット上の記事すべてが問題であるとは思っていません。インターネットの最大の良さは、スピーディに情報を発信できることにあります。そこは紙の本や新聞には真似できないことです。
ただ、今回のWelqのように、医療など人の生き死にに関わる情報については、しっかり時間をかけ吟味されるべきでしたし、そもそも超専門性な知識がインターネット上にホイホイ転がっているわけはないんです。
お医者さんが運営しているホームページでの質疑応答ですら、それもいち医者の見解にすぎません。医者にかかる時はセカンド・オピニオンという別の医者に診断をうけ、客観的に判断を受けることも多くあります。医者の診断ですら、回答が難しいことを、インターネットで知らない誰かが書いた情報で判断してしまうのは、やはり避けたいものです。
つまり、Googleのアルゴリズムで質の低い記事が上位表示されているのではなく、そもそも信頼に足る情報そのものが、インターネット上には少ないのです。だからこそ、Welqのようなサイトの記事が、検索順位で1位を取る、なんてことが起きるわけです。
求められるのは読者の情報リテラシーと、運営者の情報倫理
さて、色々と書きましたが、まとめると
- 良質な情報の発信者がそもそも少ない
- 良質な情報はインターネット上に数少ない
- 情報を受け取る側もしっかり吟味するべき(クリティカル・シンキング)
の3つですね。ググってすぐ分かることは、しょせんそれだけの知識です。本当に価値のある知識は、意外なほどインターネット上に出回っていないもの。そういった情報を得るために、私達は足を運んだり、経験のある人に頼ったりするわけです。
また、私自身も英語学習の情報サイトを運営しているのですが、情報を発信する側も、やはり倫理観を捨てず、情報に責任を持つべきです。「あくまで情報はあなたが判断してね!」というのは、乱暴すぎる理屈ですからね。
まだまだインターネットにある情報は未熟で、それと一緒に生きる私達も、正しい付き合い方をしていきたい。改めてそう思うWelq騒動でした。
個人的には医療情報がインターネットで広く読めるようになることは応援しているので、DeNAや企業の情報発信に期待したいところです。